トラウマ書棚

読書好きな3児のママが、これまでに出会った本を紹介します。

相模原の事件はただ悲しく、苦しい

相模原の障害者殺傷事件。恐れていたことが現実になってしまった、という感じです。日頃から「障害者は無益な存在だから社会から消した方がいい」「かわいそうだから消えろとまでは言わないけれど、そばにいてほしくないから隔離してほしい」なんていうのは伝わってくるので。

手がかかる子ほどかわいい、というのは本当

長男は軽度自閉症。小さいころは多動もあり、言語の発達がかなり遅れていたので意思疎通が困難でした。いつか事故に遭うのでは、というほど動き回って困りました。「発達障害の疑いあり」といわれた時には二人目を妊娠しており、その時は正直迷いました。「子どもに障害の疑いのある状態で2人目を生んでいいのだろうか」

主人のひと言で言い争いになりました、「産みたかったら産んでいいよ」主人は決して「どうせ育児は女の仕事」と思っていたのではなく、1週間後にその意味を知りました。「2人とも実家は遠いし、1人目でかなり苦労しているから、大変そうだったら産まない選択肢もある。でも、3人で頑張っていく、というのであれば、もちろん一緒に頑張る」そういう意味でした。

「1人目が障害児だったとして、健常児に弟・妹がいること、障害児に弟・妹がいること、何も違わない」そうも言ってくれました。私自身の中にも差別の感情があったのかもしれません。「もし障害があったとしたら○○すべきではない」というような。

その後、私の出産入院中に長男が利用できる保育園を探したのですが、その時に思いもよらないことが起こりました。一旦は許可された認可保育園の入園が面談の後に取り消されました。理由は「多動の可能性があるため」ということでした。役所の担当窓口の人にも言われました。「2歳過ぎて、ベビーカー乗っているようじゃ、ねえ」

事情は分かります。保育士の先生が足りないとか、多動であると先生を増やさなければならなくなる、とか。同じ状況でも子どもの発達で悩んでいるお母さんを傷つけずに済む言い方があるはずです。「少ない職員で対応しており、お子さんや他のお友達の安全を確保することが難しくなってしまいますので、受け付けることができません」など。

これまで「どうしてお前は言うことを聞かない!」とただ叱ってきただけの息子を、この時「守ってやらなければ」と思いました。外から攻撃されることによってはじめて自分の愛情を知りました。手のかかる子ほどかわいい、そう思ったのです。

差別の感情は届いている

その後、息子は自治体が行っている療育のプログラムを受け、たくさんの方にお世話になりながら成長しました。他の障害児を持つお母さんも、皆、同様の対応をされ、悲しい思いをしていたそうです。なので報復として、長女・次男出産後、知り合ったお母さんたちに「あの保育園は健常児だけ入園を許可し、障害児は相手にしないから。差別とかひどいから。それを知っておいて」と事実を教えています。

幼稚園には障害児でも入園できているのを見る一方で、障害児が保育園の入園を許可された話はあまり聞きません。元々待機児童が多いから仕方がないとあきらめるしか無いのですが「障害児枠」というものがあるのは都市伝説かな、と障害児を持つママ友と言い合っています。

生まれたばかりの長女を抱いて、バスに乗っていたら、見知らぬおばあさんに話しかけられました。「よかったわね。元気に生まれて。障害持って生まれたら大変よ」ただ無言で笑い返すしかなかったのですが、もやもやした気持ちは消えません。

私は元々、大変な人がいたら助けてあげなければ、と思う方でした。手を貸してほしい人がいたら少しでも助けるし、介護の仕事を少しばかりの時間、していたこともあるので歩行介助やバスの昇降の介助ぐらいは時々して、疾風のごとく去っていきます。(宗教などやってません。念のため)

世の中、必ずしも善意や好意ばかりではなく、悪意や傍観の方が圧倒的であるのを感じます。「私は正しい」と主張するのではありませんが、大変な人を見ても「社会から排除すべき」「自分や自分の子がこうでなくてよかった」としか思えない人が多いようです。

確かに、障害者の中には、善悪の判断ができず、人を傷つけることがある人もいます。小学生の頃、養護学級(今でいう支援級)の上級生で低学年の女の子に攻撃をする人がいて、私も首を絞められたことがあります。その頃は確かに怖く、養護学級にも在籍する子にも近付かないようにしていました。今は時代が変わり、そのようなことは絶対にないと思われます。

必要な教育や治療、監護さえあれば障害児・障害者と健常者が共に暮らしていくことができるのではないでしょうか。それから相手の立場で考えること。「障害者は消えろ」「私じゃなくてよかった」としか考えられない、非難・傍観だけの人は、心が欠けている、と私は思います。

今は、「発達障害」かなり知られるようになりました。自閉症に関する情報が少なかった時代にかなり参考になった本です。

光とともに… (1)
戸部 けいこ 作
光とともに… (1)

作者の戸部けいこさん、2010年に亡くなられ、この作品は未完成のまま亡くなられたそうで、残されたネームなどを基に15巻を刊行したそうです。

光とともに… 全15巻
戸部 けいこ 作
光とともに…全15巻 完結セット

文庫版も。

光とともに… 全10巻
戸部 けいこ 作
光とともに・・・?自閉症児を抱えて? 文庫版 全10巻完結セット (秋田文庫 )